岐阜県養老町にあるハンバーグ専門店「299(にくきゅう)」を訪れた。2025年7月にオープンしたばかりの新しい店だが、すでに評判は高く、昼時には満席になることも珍しくない。場所は飛騨牛を扱う精肉店「丸明養老本店」のすぐ近く。夜は居酒屋「いっちゃん」として営業している店舗を昼だけ間借りしている。
店の前には大きな「299」の幕が掲げられており、初めてでもすぐに見つけることができた。駐車場も広く、車での利用も便利だ。店内に入ると大きな一枚板のテーブルが目を引く。小上がりにはテーブル席もあり、どこか家庭的で落ち着いた雰囲気が漂っていた。
この店を始めたのは養老町出身の伊東杏奈さん。実家は精肉業を営んでおり、長年肉と向き合ってきた父親が仕入れる飛騨牛を使って何かできないかと考えたことが開業のきっかけだったという。現在は今年入籍した夫と二人三脚で店を切り盛りし、両親もサポートしている。まさに家族総出で作り上げた店だった。
メニューを見ると、「299ハンバーグ」「チーズハンバーグ」「和風ハンバーグ」、さらにローストビーフ丼や日替わりランチなどが並んでいる。どれも魅力的だったが、まずは看板メニューの「299ハンバーグ」を注文することにした。ソースはオニオンソースを選び、さらに目玉焼きとソーセージをトッピングした。
料理が運ばれてくると、熱々の鉄板から立ち上る香りに食欲を刺激される。付け合わせにはブロッコリーやコーン、じゃがいも、人参などの焼き野菜が添えられていた。よく見ると鉄板の上には猫の形をした人参が置かれていて、店名の「にくきゅう」にちなんだ遊び心を感じた。
ナイフを入れた瞬間、その評判の理由がすぐに分かった。中から大量の肉汁があふれ出してくる。まるで小さな肉汁の泉のようで、思わず見入ってしまった。一口食べると飛騨牛ならではの濃厚な旨みが口いっぱいに広がる。脂は重たさがなく、甘みを感じながらも後味は驚くほど軽い。肉の存在感をしっかり感じられる一方で、くどさは全くなかった。
聞けば使用しているのは飛騨牛の希少部位「カッパ」。赤身の旨みと脂の甘みを兼ね備えた部位で、店主の父親が長年の経験を活かして選び抜いた肉だという。ハンバーグ作りでは何度も試作を重ね、肉汁が出ない失敗も繰り返したそうだが、その結果として完成した一皿には確かな説得力があった。
オニオンソースは肉の旨みを邪魔せず、ほどよい甘みとコクを添えている。デミグラスソースも人気らしいが、個人的にはオニオンソースの方が肉そのものの味を楽しめるように感じた。トッピングした目玉焼きの黄身を崩して絡めるとさらにまろやかになり、ご飯が止まらなくなる。ソーセージも肉屋ならではの品質で、酒のつまみにもぴったりだった。
実はメニューには載っていなかったが、店内に樽ハイ倶楽部とアサヒスーパードライのサーバーが見えた。思い切って聞いてみると提供可能とのことだったので、迷わず樽ハイ倶楽部を注文した。すると当初考えていたチーズハンバーグ定食をやめ、ローストビーフ丼を主食にして、299ハンバーグを単品で酒のアテとして楽しむ作戦に変更した。
ローストビーフ丼も見事だった。しっとりとした肉がたっぷり盛られ、肉の町・養老らしさを感じる一杯だった。樽ハイとの相性も抜群で、気付けばグラスがどんどん空いていく。
しかし酒が進むにつれ、つまみが足りなくなってきた。そこで追加でチーズハンバーグ単品にソーセージトッピングを注文。熱々のチーズが肉汁と絡み合い、これまた絶品だった。飛騨牛の旨みとチーズのコクが重なり合い、思わず笑みがこぼれる。人気メニューである理由がよく分かった。
店内を見渡すと、地元客が次々と訪れていた。「肉汁がすごい」「この値段は安い」といった声が聞こえてくる。飛騨牛を使いながら1000円という価格設定は確かに驚きだ。普通なら倍近い値段でも不思議ではない内容だった。
養老町といえば焼肉店が立ち並ぶ“焼肉街道”で知られている。しかし、その中でハンバーグ専門店という選択は新鮮だった。焼肉以外の形で地元の良質な肉を味わってもらいたいという店主の思いが感じられる。精肉のプロである父親の知識、夫婦の努力、家族の支えが一体となって、この店ならではの味を生み出しているのだろう。
満腹になって店を後にした頃には、すっかりほろ酔い状態だった。千鳥足気味になりながら最寄りの美濃高田駅へ向かって歩く。養老ののどかな景色を眺めながら、先ほど味わった飛騨牛の旨みを思い返していた。
肉汁あふれる飛騨牛ハンバーグ、手頃な価格、家族の温かさが伝わる接客。299は単なるハンバーグ店ではなく、養老の新しい名物になり得る魅力を持った店だった。肉好きなら一度は訪れる価値のある一軒であり、ここでしか味わえない感動的な肉汁体験が待っている。
<関連する記事>




<関連する動画>
<店舗情報>
岐阜県養老郡養老町三神町431-13
営業時間⏰11:00〜15:00(14:30 LO)
定休日🌱月曜日・木曜日(その他不定休あり)
支払方法💲現金・PayPay









