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岩手県大船渡市にある人気ラーメン店「秋刀魚だし黒船」は、地元特産のサンマを生かした“サンマラーメン”を味わえる名店として知られている。大船渡市は本州有数のサンマ水揚げ量を誇る港町で、市を挙げてサンマラーメンをPRしている。その中でも「黒船」は高い評価を受けており、「いわて2021ラーメン総選挙」で優勝した実績を持つ人気店だ。

店は大船渡市と住田町を結ぶ国道107号沿いにあり、外壁に書かれた「奥深き味 秋刀魚だし」の文字が目印。営業時間は昼の11時から15時までで、大船渡駅近くには夜営業を行う姉妹店もある。店内にはカウンター席、テーブル席、小上がり席が用意され、ロックテイストあふれる内装が特徴的。壁には数多くのサイン色紙やギター、ロックミュージシャンのポスターが飾られ、普通のラーメン店とは一味違う独特の雰囲気を醸し出している。また、同店のラーメンはカップラーメン化もされており、その知名度の高さもうかがえる。

メニューの中心は、サンマ節を使った「特製秋刀魚だしらーめん」の醤油味と塩味。さらに、平日限定でライスや半チャーハン、餃子がセットになったお得なメニューも提供されている。そのほか、「カニ白湯ラーメン」や「三陸ジンジャー」など、三陸らしい個性的なメニューも並び、何度訪れても楽しめる構成となっている。

看板メニューの「特製秋刀魚だしらーめん(醤油)」は、見た目にも豪華な一杯だ。一般的なサンマラーメンでは、サンマの味醂干しを丸ごと載せる店も多いが、「黒船」では豚チャーシューなどを使った王道スタイルを採用している。具材には炙り豚チャーシュー、レアチャーシュー、鶏ハム、煮卵、メンマ、青ネギが美しく盛り付けられ、満足感も高い。

最大の特徴は、黄金色に透き通ったスープ。三陸産サンマから作られた「サンマ節」の香ばしい風味と、岩手のブランド地鶏「南部どり」の鶏ガラのうま味が絶妙に重なり、コクがありながらも後味は驚くほどすっきりしている。魚介系ラーメン特有の強いクセはなく、上品で毎日でも食べたくなるような味わいだ。麺には岩手県産小麦を使った自家製の細ストレート麺を使用。ほどよい柔らかさでスープとの相性が抜群で、つるりとした喉越しが楽しめる。鰹節系の魚介ラーメンとは異なる、サンマならではの奥深い風味が魅力となっている。

この店を営むのは、兵庫県明石市出身の岩瀬龍三さん。18歳で上京し、コンピューター会社に勤務した後、2000年に妻の故郷である大船渡市へ移住した。もともとラーメン好きだった岩瀬さんは、フランチャイズのラーメン店を開業したものの、「自分の味ではない」という葛藤を抱え、約2年で閉店。しかしその経験を通してラーメン作りの奥深さに魅了され、自分だけの味を追求する決意を固めた。

そこで着目したのが、大船渡名産のサンマだった。東京都内のサンマ節ラーメンを研究し、「大船渡のラーメンに革命を起こしたい」という思いから、2002年に「黒船」を開業した。店名には“新しい風を吹き込みたい”という意味が込められている。

開業当初は苦戦し、「もう辞めようか」と考えるほど客足が伸びなかった。しかし、「サンマの香りが意外に食べやすい」「クセがなくて美味しい」と口コミが広がり、徐々に人気店へ成長。現在では全国からファンが訪れる行列店となり、カップラーメン化やイベント出演など活躍の場も広がっている。

それでも岩瀬さんは現状に満足せず、東京の人気ラーメン店を食べ歩きながら研究を続けている。だしの取り方や麺作りを改良し、「ラーメン作りに完成はない」と語る姿勢から、職人としての探究心がうかがえる。

また、店内に漂うロックな空気にも岩瀬さんの個性が表れている。若い頃にはロックバンドを組み、ボーカルとしてメジャーデビューを目指していた経歴を持つ。現在でも音楽愛は健在で、年に一度ほど店を「LIVE黒船 a go go」に変え、プロミュージシャンを招いたライブイベントを開催しているという。白黒の市松模様の床は、東京の有名ライブハウス「新宿ロフト」をイメージしたものだそうだ。

「秋刀魚だし黒船」は、大船渡の特産品であるサンマを独自の感性でラーメンへ昇華し、地域の魅力を全国へ発信している一軒。サンマ節の香り豊かな黄金スープと、店主の情熱が詰まった一杯は、大船渡を訪れた際にぜひ味わいたいご当地ラーメンである。

 

 

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