ピックアップ記事

那須塩原市のJR西那須野駅近くにある「そばうどん かどや」は、昭和28年創業の老舗そば店で、地元ではもちろん、県外のグルメファンや大盛り好きにも知られる人気店である。創業から長い歴史を持ちながらも、店内は清潔感があり明るく、昔ながらの蕎麦屋の雰囲気と現代的な居心地の良さを兼ね備えている。西那須野駅西口から徒歩数分という立地の良さもあり、昼時には満席になることも珍しくなく、開店前から客が集まるほどの人気ぶりを見せている。

この店の最大の特徴は、栃木県北地域独特の名物「冷やしそば」を味わえることにある。一般的に「冷やし」と聞くと冷たいつゆを想像するが、ここでいう冷やしそばは、冷たい蕎麦を温かいつゆにつけて食べる独特のスタイル。県北地方では「ひやし」と「ひたし」が同じ意味で使われていたことから、「温かいつゆに浸して食べるそば」が「冷やしそば」と呼ばれるようになったという。今で言う“つけ麺”のような食べ方だが、その歴史はラーメンのつけ麺文化よりも古いとも言われている。

看板メニューは「冷やしたぬきそば」。温かいつゆには大量の天かすとネギが入り、甘辛い醤油ベースのつゆにはしっかりとした出汁の旨味が感じられる。さらに白菜が加えられているのも特徴で、コクがありながらどこか優しい味わいに仕上がっている。このつゆに冷たい蕎麦を浸して食べると、香ばしい天かすの風味と蕎麦の食感が絶妙に調和し、多くの人を魅了している。

蕎麦自体も非常に個性的だ。一般的な細打ち蕎麦とは異なり、幅広で厚みのある平打ち麺に近い形状をしており、強いコシとモチモチした弾力が特徴。のど越しを楽しむというより、しっかり噛んで蕎麦の風味を味わうタイプで、噛むほどに蕎麦の実の香りが広がる。好みは分かれるかもしれないが、この独特の食感にハマる人も多い。

また、「かどや」は大盛り店としても有名で、中盛、大盛、特盛とサイズアップが可能。特盛になると驚異的な量となり、訪れた客の中には「1キロ以上は確実にある」「実際は1.5キロ近いのでは」と驚く声もある。山のように盛られた蕎麦は見た目のインパクトも抜群で、食べ進めてもなかなか減らない。途中で雪崩のように崩れ落ちるほどの盛り付けで、大食い好きの間でも話題になっている。

冷やしたぬき以外にも、「冷しかき揚げ」も人気メニュー。小海老や玉ねぎ、人参など具だくさんのかき揚げが温かいつゆに浸され、蕎麦と一緒に食べることで油のコクと出汁の旨味が合わさる。小海老の香ばしさや海老のプリッとした食感も楽しめ、満足感が高い一品だ。

付け合わせにも店の個性が表れている。薬味として添えられる大根おろしは辛味が強く、後半に加えることで味を引き締めてくれる。さらに、オリジナルのピリ辛もやしも名物の一つで、口直しとしてそのまま食べても美味しく、蕎麦との相性も良い。生玉子を追加してまろやかな味変を楽しむ人も多く、卓上の七味唐辛子を加えて風味を変えるなど、最後まで飽きずに食べられる工夫ができる。

店内は中央に大きな無垢板のテーブルが置かれ、テーブル席や小上がり席も用意されている。掃除が行き届き、蕎麦屋らしい清潔感があり、待機用の椅子まで設置されるなど配慮も行き届いている。スタッフや店主の接客も評判が良く、特に二代目店主の人柄の良さに感動する客も多い。現在40代後半の店主は、一度別の仕事に就いた後に店を継ぎ、今では忙しい日々を送りながらも、温かな接客で店を支えている。

また、「そば前」と呼ばれる蕎麦前酒を楽しめるのも魅力。地元・大田原市の池島酒造による日本酒「池錦」の“そばまえ”は、すっきりした飲み口と樽の香りが心地良く、蕎麦を待つ時間を豊かにしてくれる。

「かどや」は、栃木県北の食文化を今に伝える貴重な存在であり、独特の冷やしそば文化、大胆な盛りの迫力、そして人情味あふれる接客が揃った名店である。地元客に長年愛されるのはもちろん、遠方から訪れる価値のある一軒と言えるだろう。

ピックアップ記事
おすすめの記事